東大への数学 [最終更新日:2010年12月25日]

数理哲人講義録「東大への数学」が,発売された。

東大への数学 第四巻:B5版,268ページ,定価3,200円(税込3,360円)
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<はじめに>より抜粋

 今回は,帝京大学高等学校(東京都八王子市)に在籍する受験生諸君との試合の模様を収録した.2010年8月10日から13日にかけての28時限の連続講義の記録である.とくに,10日から13日にかけての3日間は,始業の1時限目から下校時刻を迎える8時限目までの「一気通貫」講義であった.生徒諸君にとっても,8時限連続の数学の闘いが3日半28時限も続くというのは,生涯初めてのデスマッチ体験であったと言ってよいだろう.28時限の試練を超えた諸君は,受験生としてさらに逞しい面構えになった.油断せず,自信と誇りをもって,タイトルマッチ(大学入試)まで残る数ヶ月の選手生活を全うしてもらいたい.

 さて講義の内容であるが,今回は28時限のうちの12時限を文系・理系の共通範囲から,残る16時限を理系の範囲から,カリキュラムを編成した.彼ら選手たち(受験生)とは,日常の講義をともにしており,東大の過去問等については,授業時間内に取扱い,講義をすすめているところである.そこで,今回の「夏の金網デスマッチ」編では,すべての問題を2010年2月・3月に出題された大学入試問題から選定した.もちろん「東大への数学」と名乗る以上,問題選定においては東大の過去の出題傾向とのマッチングを考慮している.


東大への数学 第参巻:B5版,144ページ,定価2,800円(税込2,940円)
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<はじめに>より抜粋

さて講義の内容であるが,今回は新高校3年生のチームが始動するということで,カリキュラムをリセットした.「春の陣」の講義テーマは,整数問題と空間図形の2つの分野である.いずれの分野も苦手とする受験生が多い単元である.1コマの講義は80分とし,整数問題については「約数・倍数・剰余」「素数・不定方程式」「整数と数列」の3つのテーマを各々2コマずつ,計6コマを講義した.空間図形については,理系の受験生を対象とし,「ベクトル」「多面体と球面」「体積」の3つのテーマを各々2コマずつ,計6コマを講義した.3日間で5コマ+5コマ+2コマの合計12コマというびっしりのスケジュールであったが,講師・挑戦者ともども集中力を維持することができて,充実した合宿試合になった.


東大への数学 第弐巻:B5版,156ページ,定価2,800円(税込2,940円)
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<はじめに>より抜粋

 講義の内容であるが,2009年夏合宿では「代数・幾何」の分野に重心を置いていた(「東大への数学・第壱巻」を参照).解析・数論・確率といった分野まで同質の講義を行って初めて,真の東大対策の練習試合としてコンプリートできるという趣旨から「解析・数論・確率」編の集中講義の模様を中継する本書「東大への数学・第弐巻」が編纂された.第1章から第4章まで(確率・数列・極限・数論)の32問は,すべて東京大学の過去問である.第5章(事前課題1)は,参加者が受験生のみならず高校2年生も含まれていることに鑑み,ものごとの根源を問うような証明問題を中心に6問を選定した.第6章(事前課題2)は,オリジナル問題3問を選定し,参加者には答案作成をしてもらったうえで,試合の日に講評を行った.
 
 この充実した試合に参加した倉吉東高等学校チームは,今春の入試で驚くべき成果を挙げてくれた.創立百年余りの歴史を塗り替える成果だ.よくやった.次は,一緒に参加した2校の高校2年生諸君の番だ.



東大への数学 第壱巻:B5版,188ページ,定価3,200円(税込3,360円)

2009年7月に実施した,鳥取県立倉吉東高校における講義の記録だ。
米谷達也著「変数と図形表現」(現代数学社)と同じ章立てをとる。
同書の内容を理解すれば,東大の問題が解けるということを実証している。
さらに,補章「数値計算への応用」では,近年の顕著な出題傾向をフォロー。

▼表紙画像
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▼「はじめに」より


 私が教室で常々述べている「闘う数学」というコンセプトがある。これは「目標達成のためには,自分の現状に甘んじた問題を解くだけでは足りない。常に半歩・一歩上の問題と闘え!」というものだ。このような闘いのリングを与えるためのシリーズとして,プリパス知恵の館文庫から,「数学格闘技」シリーズ5巻を上程している。そして,さらにそのパワーアップ版として位置づけられるのが,本書を含む新シリーズ「数理哲人講義録」である。

 ことの発端は,2009年3月のことである。私は,いくつかの高等学校で「学校を育てる」ビジネスを行っている関係で,とある私学の教員の方々との春休みの宴会に参加した。いつも仕事をご一緒させていただいている数学科のO先生が「きょう,大学時代の同級生と二十数年ぶりに,ばったり再会したんだ」と,その日に急遽連れて来たのが,鳥取県立倉吉東高等学校の芝野浩貴先生である。芝野先生はこの日が初対面であったのだが,帰りがけには「夏休みに倉吉東に教えに来てもらえないか」と声をかけていただくくらいに 意気投合した。私の方では酒の席の話という程度に留めていたのだが,後日に本当に出講依頼をいただいたので,以後私は芝野先生をプロモーターと呼ぶようになった。

 メール上での打ち合わせや教材入稿の後,2009年7月の試合の日がやってきた。私は,講義というものは一期一会のものと捉え,入念な準備をすることはもちろん,同じストーリー構成の講義は一度しか行わない主義である。そんなわけで,講義のことを「試合」と呼んでいる。今回はさしずめ,巡業ないし遠征試合である。試合には前哨戦がつきもので,前日に倉吉駅に降り立った私を迎えてくれたプロモーターはじめ先生方は,覆面姿の私を熱く歓迎して下さった。街中の人々の好奇の視線をよそに,学校へ街へ宿へとご案内をいただいた。翌日からの2日半にわたる試合では,倉吉東高校および同校専攻科の生徒さんと熱い闘いを繰り広げた。90分10コマの予定だけでも15時間におよぶ長丁場の試合であるが,さらに熱心な質疑応答も続いたので,3日間で20時間には及んだことと思う。先生方には私のタフさを誉めていただいたが,生徒さんたちのタフネスぶりも賞賛に値するものである。

 講義の合間には,旅館や料理店での楽しいくつろぎの時間を味わうことができた。ホスト校である倉吉東高等学校の教職員の皆さんと,倉吉の街の皆さんの人情にも感謝申し上げる。驚くべき充実した旅の様子は私の所属するプリパスのウェブサイト(http://www.prepass.co.jp/kamen/)に写真付きで報告してあるので,お時間があればご覧頂きたい。

 さて,肝心の数学の内容であるが,プロモーターより当初に依頼を受けたのは,米谷達也著『変数と図形表現』(現代数学社)を教科書とする講義であった。しかし,本として書かれていることをそのまま講義するのは私の趣味ではない。打ち合わせを経た末に,上記書籍の内容を理解すれば,生徒たちの志望校の問題は間違いなく解けるということを,過去問を通して伝えるのがよかろうということになった。そこで,『変数と図形表現』(全9章)と同じ章立てで講義を組み立て,取り扱う問題は過去20年の東京大学の問題を中心に,教材を編集した。本書「問題一覧」に掲載の問題を事前に渡して,書籍とともに予習をしてきてもらうことにした。また,近年の出題傾向をフォローするため,補遺として「数値計算への応用」と題する章を加え,全40問の講義となった。15時間で40問であるから,一般の大手予備校の夏期講習会などとはおよそ比較にならないほど充実した試合であったと考えている。その講義録が本書「東大への数学 第壱巻」というわけである。

 とはいえ,上記の講義内容は「代数・幾何」の分野に重心を置いている。解析・数論・確率といった分野まで同質の講義を行って初めて,真の東大対策の練習試合としてコンプリートできるのである。プロモーターはこのことを理解して,夏の試合から6ヶ月後にあたるこの1月末に,第二の遠征試合の日程を組んでくれた。こちらの「解析・数論・確率」編についてはすでに教材を入稿した。試合を経て,「東大への数学 第弐巻」となる予定である。

 この充実した試合の様子を収録した本書が,後に続く大学受験生諸君の学習に役立つのであれば,この上ない喜びである。
 数理哲人は,目標を抱く君たちの,熱い闘いを応援する。


平成22年1月 
覆面の貴講師
数理哲人




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