数学格闘技 [最終更新日:2010年9月26日]

2010年1月,数理哲人の著書「数学格闘技」全5巻が,一挙に発売だ。

第壱巻:A5版,60問収録,254ページ,定価3,000円(税込3,150円)
第弐巻:A5版,60問収録,204ページ,定価2,600円(税込2,730円)
第参巻:A5版,60問収録,236ページ,定価2,800円(税込2,940円)
第四巻:A5版,40問収録,204ページ,定価2,600円(税込2,730円)
第伍巻:A5版,40問収録,146ページ,定価2,000円(税込2,100円)

さらに2010年8月以降,第6巻以降の続編が,リリースされている。

第陸巻:A5版,166ページ,定価2,200円(税込2,310円)
第漆巻:A5版,95問収録,260ページ,定価3,000円(税込3,150円)
第捌巻:A5版,96問収録,254ページ,定価3,000円(税込3,150円)
第玖巻:A5版,30問収録,194ページ,定価3,000円(税込3,150円)

▼表紙にみえる手の位置が,少しずつずれているように見えるが?
数学格闘技表紙vol1数学格闘技表紙vol2
数学格闘技表紙vol3数学格闘技表紙vol4数学格闘技表紙vol5
数学格闘技表紙vol6_v02数学格闘技表紙vol7_v02数学格闘技表紙vol8_v02
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背表紙が,絵になるのだ!
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さらに,表紙が,つながっているのだ!
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ページサンプル(豊富な図版を使い,1問ごとに徹底的に解剖する解説)
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本書「はじめに」より

 私が教室で常々述べている「闘う数学」というコンセプトがある。これは「目標達成のためには,自分の現状に甘んじた問題を解くだけでは足りない。常に半歩・一歩上の問題と闘え!」というものだ。このような闘いのリングを与えるのが本書の役割である。

 本書の前身は,1996年から2000年にかけてプリパス「知恵の館文庫」にて発刊された「数学格闘技【文理の】30題」「数学格闘技【理系の】30題」という名の一連のシリーズである。当時,最高レベルを目指す受験生諸君の支持を得ていた「闘う50題 94」「 闘う50題 95」(小島敏久・米谷達也共著/SEG出版)の後継書籍として,プリパス塾生および通信教育生の好評をいただいていたもので,本書で鍛えて難関の第一志望校に進学できたという喜びの声をすいぶんと頂いたものである。

 21世紀に入ってからの大学入試は,基礎・基本を問う方向性に向かい,「ゆとり教育モード」の出題が増えて来たという感触が見られたため, 90年代後半に続けていた「数学格闘技」シリーズを続行させる意義が乏しくなったと判断した。とりわけ 06年からの現行カリキュラムでの大学入試には「ゆとり」対応の様々な工夫がなされているが,他方では「トップレベル生にはそれにふさわしい要求を」という原点回帰(揺り戻し)の傾向も見られる。この点について私はDVDブック「数理哲人の東大数学 09」(現代数学社)にて所感を述べているところであるが,昨今において困るのは,学習参考書等についても入試の現実を追認する「ゆとり」対応モードになっているという現象である。そこでこの度, 90年代に好評を博した「数学格闘技」シリーズの復刊に踏み切った次第である。

 本書では実際の入試問題の中から「時間をかけて格闘するに値する」良い問題を積極的に取り上げている。問題選択にあたっては,大学入試数学の最新の情勢をたっぷりと分析したうえで,教育的な配慮が整った問題・数学的にも興味深い内容を満載するよう心がけた。したがって,大学受験生のみならず,進んだ学習を目指す意気盛んな高校生,理工系の大学生,数学を教える先生方,数学に興味をお持ちの社会人の方などの幅広い人達に楽しんで頂けるものと考えている。


■1 良問を集める基準
 本書の編纂にあたり,全国の大学入試問題のなかから「よい問題を選ぶ」とはどういうことなのか?というテーマについて考え,検討を重ねた結果,次に挙げたような条件が浮かび上がってきた。

□1 
テーマがある
この問題を採用して提示する以上,それを通して何を教えたいのか,教えることができるのかを考えた。また,同じ数学を教える人間として,出題者である大学の先生が何を問いたいのかを推察し,そのテーマをダイレクトに伝えることを心がけた。
□2 
教育的配慮がある
初見で解く学生への親心として出題者はいろいろな工夫をしている。条件を付け加えたり,設定を具体的なものにしたり,小問に分割しながらそれを段階を追ってヒントにするなどの方法をとる。その問題に全力でぶつかることによって,学生の頭脳のなかに一つの進歩が芽生えるような問題。そういう教育的配慮の行き渡った問題は,出題者の素晴らしいプレゼントである。
□3 
数学的背景がある
「問題のための問題」ではなく,小さなことでもいいからその問題の中に「数学的はバックグラウンドがあること」に意義を見い出すことができる。ただし,このような背景事実を本書で学ぶ学生自身が見つけださなくても構わない。本書が出題者に代わってお伝えする。
□4 
複数分野の融合がある
 一つの事象を解明するために,複数の分野からの数学的道具を使いこなす必要のある問題がたくさんある。そのような問題を「融合問題」と呼ぶ。思考のネットワークの中でいろいろが事実がビビッと結合し,花開くさまは知的な興奮を呼び起こすものだ。このようなネットワークの使い方を実践してみせるような問題を選定した。
□5 
新傾向を予見する内容である
 入試の数学は,徐々に変化している。高校数学の土俵の中で,毎年新しい試みの意欲的な出題が見られる。中には,翌年以降の入試数学の流行を作り出すパイオニア的な出題もある。そのような魅力的な問題を選び出して皆さんに伝えるのも,この本の使命であろうと考える。

■2 情報の精選

情報の洪水から君たちを救い出す
 毎年の大学入試問題は膨大な量にのぼるので,普通の受験生が学習することができる容量をはるかに超えているし,実際すべてを学ぶ必要はない。そんな中で題という問題数に絞るあたり「上昇志向の受験生が1,2カ月程度で自習可能な量」であることを目安にした。筆者の講義を直接受けることができない人達が,本書で学ぶことによってそれと同等以上の成果を挙げられることを心から望んでいる。
膨大な「星取表」を作成
 選定作業にあたっては,一つの大学の入試問題のセットを分析し,良い問題を見つけると印をつけて良問リストに加えることを繰り返した。このリストを検討し,納得した上で推薦できる問題のみを選んである。したがって,本書には日々受験指導に携わる者として責任を持ってお届けできる問題と講義が揃っている。少なくともこの本を手にした皆さんは,
「もうクズのような問題を解かされることはないのだっ!」
と断言できるのだ。

■3 本書の構成
 本書の魅力は,「真にセレクトされた良問」「洗練された解答と研究」「十分な質・量の図版」の3点にある。

数学格闘技・問題一覧
 まず各々の分冊の「珠玉の問題」にじっくり挑戦して欲しい。出来るかどうかが問題なのではなく,「考え,頭の中で闘うこと」が大切なのだ。そこから,皆さんの頭の中に「数学的思考回路」が養成されるだろう。
洗練された【解答】と【研究】
 本文の解答ページは,教室での指導経験に基づいて,受験生が発想しやすい「スタンダードな【解答】」を基調とした。そして,問題によっては
「エレガントで問題の本質をついた【別解】」
「数学的背景を探る徹底的な【研究】」
「かゆいところに手が届く【参考】」
がたっぷりとちりばめられている。

大きく豊富な図版
 問題の理解には,グラフィカルな図版が有効だ。本書では,ページ数を惜しまず大きな図を掲載するように心がけた。日頃の教室でも,「でっかい図を書きなさい」ということをくり返し指導している。これだけのことで,何倍も理解が深まるのだ。日々の学習においても大きな図を書くことを心がけて欲しい。

■4 利用法 
理・工学系志望の人は
 旧帝国大学レベルや上位私立大学を目指す人は,【文理】および【理系】のすべての問題に取り組んで欲しい。決して時間の無駄はさせない。過去問の水準を参考にして,あまりに難しいものは飛ばしても構わない。
その他の理系(医・歯・薬・農・教育など)志望の人は
 難関上位校の医学部を目指すなら全問に取り組んで欲しいものだが,それ以外の場合,【理系】の章(数学格闘技 I・A・II・B)はかなり難しいので,ひとまず敬遠しても構わないだろう。
文科系志望の人は
 二次試験に数学を課す国立大学文科系学部や,記述式の数学試験のある上位私立大学の文科系(法・経・商など)学部を目指す人は,【文理】の問題をしっかりと演習してもらいたい。

 目標を抱く君たちの,熱い闘いを応援する。


平成20年11月        
覆面の貴講師
数理哲人


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