数学の思考回路 [最終更新日:2011年2月2日]

数理哲人の著書「数学の思考回路」全3巻(+問題一覧)が,いよいよ一般リリースされた。
TCOM01_cover_v031TCOM02_cover_v031

TCOM03_cover_v031TCOM04_cover_v031

はじめに(2010年版)

 本書は20年あまりの沿革をもっており,1989年版/1993年版/1998年版/2010年版と歴史を重ねて4度目の誕生を迎えました。今回は覆面の貴講師=数理哲人氏に補訂を依頼し,氏の献身的な努力のおかげで,さらなるパワーアップを遂げることができました。

アプローチ編での講師(T)と学生(S)の問答は実際の講義風景を追ったものではありませんが,学生達の日頃の反応や質疑応答を念頭に置いて,自習での悩みがちなポイントをフォローするように書きました。登場する学生Sと同等の学力がついたら,(数学に関しては)理系難関大学の合格水準に達していると考えて大丈夫です。(1989年版「はじめに」より)

 この2010年版では,講師(T)と学生(S)の正体が明らかになりました。
講師(T)は,言わずと知れた覆面の貴講師=数理哲人であり,学生(S)は下克上悟(げこくじょう・さとる)君です。一般には Teacher と  Student  の頭文字と思われていたTとSは,彼らのファーストネームであったのです。問答を読んでもらえれば,下克上悟君が聡明な学生であることはすぐに分かることと思いますが,分からないこと,難しいことについても「なにくそ」と取組む根性にこそ,彼の持ち味があります。
 数理哲人講師による補訂を受けて,本書が読者の頭のなかに「数学の思考回路をインストールする」という役割が,より強化されたことと思います。初期版の著者として,喜びに堪えません。

 以下,改めて,本書のコンセプトを説明します。ごまかさずに数学を勉強しようとしたことのある人なら,「基本は易しくはない」ということに気づいているでしょう。ここでいう「数学の基本」とは,
 「考えるためのソフトウェア(プログラム)を脳に書きつける」
ことです。このソフトウェアは他人から詰め込まれるものではなく,それを手に入れるには自力で脳の中に育てるしかありません。本書はその御手伝いをするために創られました。よくいわれる言葉に,
「1題1題をじっくりと学びなさい」
というのがあります。この本で学べば,それがどういうことなのかがわかります。正しい学び方を追求しているのが本書の特徴です。
「アプローチ」編では
  ヒント・本質的な考え方・定理や公式とその導き方を,
「解答」編では
  記述式試験で通用するような答案例・別解を,
「研究」編では
  一歩進んだ考察・問題の背景・他の分野との関わり等を,
取り上げました。
「ただ読むだけでなく自力で答案を書き,解答と比較検討する」
ことを実行すれば,うーんと実力アップすることを保証します。

 高校での学習から大学受験にかけての数学には,実にたくさんの内容があります。そのため,膨大な知識の海に溺れてしまい,大切なこと・本質的なことが見えなくなっている人もいることでしょう。そんな人のわだかまりを解くために,本書では高校数学全体を見渡したうえで,ネットワーク的な理解を構築するための項目を選び直しました。一見異なる分野の内容と思われることが,実は地下深くで繋がっている & &という場面がいくつかあります。この辺を察して学習を進めれば,モヤモヤが晴れるのではないでしょうか。

 このように,数学の学習法には理想的な姿があり,数学をマスターするには他の科目とは異なる態度が必要です。これを,数理哲人は一言で表現しています。

「大事なことは,覚えてはいけない。理解するのだ。」(数理哲人)

 多くの先生が,この言葉ほど,数学の学習の本質を突いたものを知らない,と言ってくれています。
 皆さん,「Thinking Circuit of Mathematics」シリーズを乗り越え,真の実力を蓄えてください。その上で,さらに数学の面白さを感じてもらえれば幸です。

2010年7月
学習結社 知恵の館 総裁
米谷 達也


著書トップ